SSブログ

『時間旅行』  18 [研究]

7  話の続きをしよう

翌朝。
ドイツの朝は早い。
フランスでは早めに取りひきしないと手に入れられないトリュフを買い求める姿が多いが、ドイツでは

ドイツのベルリン近くの都市部にあたるビジネス街。
この街は最近新しく建てられた真新しいビジネスビル群が競うようにそびえたっていた。

香奈枝は車のハンドルを握っていた。
ドイツ交通事情は健人より香奈枝の来訪歴が長かったため、彼女が案内することになった。
山の端から繊細に差し込む朝日の日光浴が心地よい。
「健人さん、もうすぐ着きますよ」
外国車であるので、左の路肩に車を滑り込ませるように一時停止させ、いったん健人に先に証券会社に入ってもらうことにした。
「申し訳ないです、香奈枝さん。後ほど駐車料金支払います」
「何言ってんの。一刻を争うビジネス、悠長なことをおしゃべりしてる暇はなくてよ♪…さ、早くお行きなさい」
そう言って車を再び発進させて、何事もなかったかのように動かす。
心中は昨夜の心配事を香奈枝も抱いていたのだけれど。
香奈枝は証券会社裏のパーキングに車を運ばせた。

健人が店頭に立って、ドイツで馴染みのクライアントを探していた。
うろうろさまよっていたら、ツカツカと歩み寄る巨体にぶつかったらしい。

鍛え上げられた二の腕、風を跳ね返す勢いの胸板、世界チャンピオン級?の肢体……
健人に向かって広げられた口元が巨体とは裏腹に柔らかく開口する。

「タ・ケ・ト!!!」
見上げた健人の目に映るその人物をやっと捉えたようだ。
「Herr,Stahl (シュタール) !! 」

シュタールと呼ばれたその大男は、数年ぶりに旧友との再会を果たしたかのように
小柄な(?)健人の肩をガッとつかみ
「Ich machte es wie!Um ohne Kommunikation plötzlich herüberzukommen.Es scheint Sie zu sein nicht.(どうしたんだ!急に連絡もなくやってくるとは。おまえらしくない。)」

と、言い放ちつつシュタールは健人を応接室へと案内しようとしたときにちょうどエントランスから香奈枝も入店したようだ。
「Nett, dich zu treffen.(初めまして)」
と、香奈枝は健人の声のする方を探して、挨拶と名刺を交換した。
見慣れないレディーの姿を視界に捉えたシュタールは
「Ist es Taketo, Weihnachtsereignis? (健人、クリスマスイベントかい?)」
と、しばし、健人の方を見てはニタリ、香奈枝の方を見てはニタリと微笑んだ。



しばらく、三人は日本とは格が違う天井も高い応接室(会議室?)でフランクに談笑しつつ、
事件の核心になる経緯を説明していった。
話の途中で、香奈枝は同じこの証券会社内にて所用があったので、離席することになったので……
 「健人さん、それじゃ待ち合わせは、ベルリン西部の方の6月17日通りを抜けたM&M付近で待ち合わせましょ!そちらは電子端末のネットワークがつながりやすいですから」
と、若干急ぎ目に席を立ち、応接室の扉を開けて証券会社のフロアを抜けようとした時に
鋭く冷たい視線を背中に感じてしまった香奈枝。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。