SSブログ

≪ショート・ショート≫ 一国一城の主 [研究]

「姫様、王様がお待ちでいらっしゃいます」
そう侍女から促され、浮かない面持ちで大広間へ入っていったテレーゼ姫。

重厚感あるマホガニー調の重たい扉を侍女が開けると、想像通り父親である国王がにんまりとテレーゼ姫を
微笑みながら迎えた。
「待っていたよ、テレーゼ」
「もう、結構ですと申し上げました、余計なことはしないで」
「まぁそうカッカしなくても、悪い縁談ではないのだから……先方もえらくお前を」
「食事はしません!下げてくれて結構です!!」
そう言い放ち、オロオロする侍女を横目に一目散に大広間を後にしたテレーゼ。



「どう思う?!また懲りもなく縁組の話を持ちだしてきたのよ!何回目だと思ってんのよ!!」
そう、つっけんどんに馴染みのホワホワした印象の宮廷司書官・ポアンにぶつけるテレーゼ。
膨大な量の蔵書目録のカードを整理分類しながら、城に入っていきた新しい古文書に記帳していく仕事の早さは城の者の中でも一目置かれている存在の女性である。
「お怒りなのはごもっともだと思います。男性は国王様だけに限ったお話ではありませんし……なんたって次期お妃のレディにたいして平気で軽々とお話を持ちかけようとされるのは配慮が足らないではと思います」
「そうなのよ!なんで男って懲りないのかしら」

「そう、だから男なんだよ」

肩にかかった勲章を重たく外しながら、書架にもたれて腕組をしている男がいた。
次期国王候補かつテレーゼ姫の婚約者だった。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。